白内障

単焦点レンズと多焦点レンズ(選定医療)

白内障手術で使用する眼内レンズには「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。そしてそれぞれに乱視矯正レンズ「トーリック眼内レンズ」があります。

単焦点眼内レンズ

白内障の手術で使われる「単焦点レンズ」は、ピントが合う距離が1か所だけのレンズです。

たとえば、

  • 遠くにピントを合わせると、手元を見るときにメガネが必要になります(これは「老眼」と同じような状態です)。
  • 反対に、近くにピントを合わせると、遠くを見るときにメガネが必要になります(これは「近視」と同じような状態です)。

通常の健康保険(社会保険や国民健康保険)を使って白内障手術を受ける場合、この単焦点レンズが使用されます。このレンズは多くの方にとって安全で安心な選択肢であり、実際に95%以上の方がこの単焦点レンズを選ばれています

多焦点眼内レンズ​

多焦点眼内レンズは、遠くと近く、または中間距離にもピントが合うように設計されたレンズです。 たとえば、「遠く+近く」や「遠く+中間+近く」といったタイプがあります。 このレンズを使うと、メガネに頼らず見える範囲が広がるというメリットがあります。 しかし、若い頃のようにすべてが自然に見えるわけではなく、見え方には少し特徴があります。

よくある見え方の変化

  • 明るいところでも、全体的にぼんやりとかすんで見える(「ワクシービジョン」といいます)
  • 暗いところでライトを見ると、光がにじんだり、輪が見える(「グレア」や「ハロー」)

これらの症状は、多くの方で時間とともに脳が慣れてきて気にならなくなることもありますが、一部の方ではずっと残ってしまうこともあります。

約1~2%の方は、半年以上たっても見え方が気になり、多焦点レンズから単焦点レンズに戻す再手術を受けることがあります。

向いている方・向いていない方

多焦点レンズは、

  • メガネをあまりかけたくない
  • 遠くも近くも、ある程度見えればOK

という方におすすめです。
一方で、

  • 夜間に車をよく運転する方
  • 細かい文字や作業を正確に見る必要がある職業の方(専門職・技術職・芸術関係ど)

には、単焦点レンズのほうが適している場合が多いです。

また、多焦点レンズを選ぶには目の詳細な検査(適応検査)が必要です。
目の病気(たとえば緑内障や網膜の病気)がある方、白内障以外の眼疾患がある場合には基本的に適応外になります。

選定療養について

これまで多焦点眼内レンズを使った白内障手術は、公的医療保険が使えず、自費診療や先進医療として扱われていました。しかし、2020年4月からは「選定療養」という制度の対象となり、保険を使って手術を受けられるようになりました(一部費用は自己負担)。

この制度では、白内障の手術そのものにかかる費用は保険が適用されますが、多焦点眼内レンズにかかる費用については患者さまご自身でご負担いただくことになります。保険診療と保険外の治療を組み合わせることで、より幅広い選択が可能になりました。

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